「キラキラネーム」と「戸籍法改正」について

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キラキラネームについて

幼稚園や学校の先生は、毎年新しいクラスを受け持つと、クラスの子どもたちの名前の文字や読み方を覚えるのに苦労すると聞いたことがあります。

最近のお子さんの名前には当て字などを用いた難読の、いわゆる「キラキラネーム」もあります。

日本の戸籍には姓と名が記載されていますが、その読み方については、記載がないことはご存じでしょうか。

現在メジャーリーグで大活躍の「大谷」選手は「オオタニ」と読みますが、この「大谷」を「オオヤ」、「オオガイ」、「ダイヤ」、「ダイタニ」、「オタニ」、「オオガヤ」と読む方もいらっしゃいます。

このように法律上は、氏名はどのように呼んでも構わないので、極端な話、「山田太郎」を「たかはしはなこ」と読み、「高橋花子」を「やまだたろう」と読んでも法的には問題がないということになります。実際にはそのようなことはあり得ないのでしょうけれども。

このようなお話をしたところで、最近次のニュースを耳にしました。

戸籍法改正について

令和3年9月7日、上川陽子法務大臣は、閣議後の記者会見において、全国民の戸籍に氏名の読み仮名を登録するため、戸籍法などの改正を9月16日の法制審議会(法務大臣の諮問機関です。)総会に諮問すると発表しました。

令和5年の通常国会への関連法案提出を目指すそうです。

これは、明治4年(1871年)の制定以来、氏名の読み方が自由であった戸籍法が大幅に変わることになります。

法制審議会では先ほど述べた個性的な漢字を使ったいわゆる「キラキラネーム」など本来とは異なる読み方をどこまで許容するかも議論するそうです。

また、政府が推進する行政デジタル化の一環として、人名に使える漢字は限定されているものの、種類の多い漢字より、五十音の標記となる仮名の方が、数が少ないのでデータ上の管理がしやすいことも読み仮名登録を検討する理由のようです。

読み仮名の登録するメリットとしては、給付金等支給手続の迅速化することができるようです。

新型コロナウイルス対策として国民に対する定額給付金の支給が速やかに行われなかったケースが問題となったので、このような事情も背景にあるのかも知れません。

この点については、迅速な行政サービスの充実が実現される反面、個人情報の管理の問題を指摘する人もいます。

さて、戸籍上の氏名の読み仮名をどのようにするかについてですが、法務省によると、氏名の読み仮名について、①公序良俗に反しない限り認める案、②氏名に使う漢字の音訓や慣用的な表音、字義との関連性も求める案が上がっているようです。

仮に②の案が採用されるとなれば、難読のいわゆる「キラキラネーム」の読み仮名を認めるがかが議論の対象となります。

他方ですでに使用中の読み仮名は認められる見通しだそうです。

これまでに使っていた読み方が法律の制定によって使えなくなることは、憲法が保障する自己決定権を侵害するのではないかとの問題があるからだと思われます。

また、戸籍法の改正により氏名の読み仮名を登録することになった場合、読み仮名の登録後にこれを変更したいときは、現在氏名の変更と同様に家庭裁判所の許可を必要とするかも問題になるようです。

仮に読み仮名の変更にも家庭裁判所の許可が必要となった場合は、家庭裁判所がどのような基準で読み仮名の変更を認めるのかも問題になりそうです。

現行法上、離婚後に子の親権者となった親が旧姓に戻った場合、子の氏を変更するには家庭裁判所の審判が必要ですが、原則として氏の変更は認められています。(離婚して親が旧姓にもどっても当然に子の氏は親の復氏とともには変わらないのです。)

そうであれば、氏名の読み仮名も変更による影響は大きくはないので原則として認められることになるのかも知れません。

また、読み仮名の登録について、今後生まれる子については、出生届をもとに読み仮名を登録すればよいのでしょうが、戸籍登録者約5200万件については、新たに読み仮名を登録する必要があります(もちろん、改正法律施行後に出生する者のみ読み仮名を登録する義務を課し、既存の登録者は読み仮名登録の必要ないとの考え方もあるでしょう。)。

その場合、一定期間内に読み仮名を届け出る義務を課すか等も検討する必要があります。

この改正が社会生活に大きく反映されることとしては、健康保険証や運転免許証などにも戸籍上の読み仮名が記載されるのではないでしょうか。

読み仮名が記載されれば、医療機関や金融機関などは名前の確認が容易になりますね。

このように氏名に読み仮名を登録するという制度に変更するだけでも検討しなければならないことが多くあります。

生まれた子にどのような名前をつけるか、どのような文字にするのか、親たちは子の成長を願い、いろいろと考えます。

制度を変える場合もいろいろと検討することは同じですね。

文責 弁護士 上土圭一

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